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皆さんは「デパレス」という言葉をご存じでしょうか? この言葉が定着するかどうかはまだ判りませんが、「デパートのレストラン」つまり、百貨店を中心にした商業施設の飲食店(フロア)を指す言葉だそうです。 百貨店などの地下にある食品販売フロアが、それまでの商業施設「常連組」テナントから脱却して「こだわりの有名店」や「知られざる地方の繁盛店」、あるいは「老舗の新しい挑戦店」など、女性客を狙った新規テナントへと入れ替えを進め、「デパ地下」と呼ばれるようになったのは有名です。 そもそも「デパ地下」とは、「女性向け百貨店」というコンセプトを掲げていた銀座の「プランタン百貨店」が、従来の百貨店のようなファミリー向け・贈答品向けの食品・惣菜・菓子売場ではなく、銀座に働くOLたちのランチ需要やグルメ嗜好に狙いを定めた食品売場を企画して評判を呼んだのが始まりだったのではないでしょうか。その後、これに倣って多くの百貨店が地下食品売場をリニューアルましたが、去る2000年に開業した渋谷東急東横店の「東急フードショー」の成功は、その後の「デパ地下」のテナント誘致政策を大きく変えるほどでした。 そしてここへ来て、「デパ地下」とは反対の施設上層階にあるレストランフロアの位置づけも変わってきました。これまで、レストランフロアにある「飲食テナント」は、商業施設にとってあくまでも物販テナントを利用しに来館する顧客への付加サービスという位置づけでした。つまり商業施設の営業の中心は物販であり、飲食店は「添え物」に過ぎなかったのです。商業施設は物販店が中心となって集客するのであり、飲食テナントは、そうした集客の責任を負わなくて良い代わりに、高い賃料や販促金の負担をして下さい、という考え方が当り前でした。 しかし現在、低迷を続ける物販売場の集客力低下に悲鳴を上げる多くの商業施設では、集客の目玉となるような、評判を呼び人気を集める飲食店テナントの発掘と誘致に必死になっています。また、単に人気店を誘致すればそれで終わり、ということではなく、継続してさまざまなイベントなどを企画しフロア全体を活性化することで、いつまでも集客力の衰えない、魅力あるレストランフロアづくりを目指している施設も増えています。 近年では、新しく開業した商業施設、あるいは大規模なリニューアルを行った商業施設のほとんどが、本来のメイン売場である物販店(小売店)と同等以上に、フードテナントの構成に力を入れ始めました。 昨年秋には、東急田園都市線の二子玉川にある「玉川高島屋ショッピングセンター(SC)」が大幅なリニューアルを終えて話題を呼びましたが、今回増床された新南館の七階から十一階の五フロアは、各フロアの床面積こそ小さいものの、すべて飲食テナントで埋められています。この「玉タカ」では、グランドオープン時の販促チラシを見るだけでも、これまでとは格段にフードテナントを重視しているデベロッパーの姿勢がうかがえる内容でした。こうした商業施設にとって、低迷する衣料品や雑貨などのファッション業界に代わり、多くの女性の心をつかむフードテナントの活性化が当面の業績向上のカギを握っていると考えられているのです。 かなり古めかしい言葉ですが、「デパ地下」で顧客を吸引し、上層階の売場を潤す狙いを「噴水効果」と呼んだりします。同様に、上層階レストランフロアで集客し、下層階を潤す狙いを「シャワー効果」と呼びます。 こうした効果が、どの程度施設全体の売上に貢献しているのかは判りませんが、少なくとも今、多くのデパート(商業施設)では、「シャワー効果」と「噴水効果」のダブル効果を狙って、常にフードテナントの構成や入れ替え、新規発掘、イベント企画などが検討されています。 そして、こうした「シャワー効果」狙いの上層階フロア戦略を「デパ上」戦略と呼んだりもするそうです。
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