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CRMという言葉をご存じでしょうか? CRMとは、「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」という言葉の頭文字で、もともとはIT系分野の経営用語として、かなり以前から使われていたコンセプトですが、従来、私たちが聞き慣れている言葉で言い替えれば、「顧客管理」に近い考え方です。 セミナーなどで、比較的多くの方々からお問い合せや質問をいただくテーマのひとつが、この「顧客管理」についてなのですが、これまでの顧客管理のイメージというのは、顧客名簿を作成し、その名簿をもとにダイレクトメールを送ったり、ポイントカードで景品や割引券をプレゼントしたり、というものだったと思います。 しかし、こうしたこれまでの顧客管理のやり方では、顧客のひとりひとりがどのようなお客様で、何を望んでいるのか、あるいは、どのようにすればひとりひとりのお客様により満足していただけるのか、といったことを考えるところまでは踏み込んでいませんでした。 要するに、ただ「多くの名簿があれば、たくさんのダイレクトメールが発送できるので、販促効果が高まる」といったレベルの販促手法でしかなかったわけです。 これに対して、CRMとは文字通り「顧客(カスタマー)」との「関係(リレーションシップ)」を「管理(マネジメント)」しようとするもので、従来の一方通行の顧客管理の手法とは異なり、ひとりひとりの顧客が、自分の会社や店にとってどのような位置づけの顧客なのか、またそれぞれの顧客が、自分の会社や店をどのように評価しているのか、どのような価値を認めて利用していただいているのか、といったことをできる限り把握していきながら、それぞれの顧客に個別に対応していこうという考え方が基本になっています。 もちろん現実的には、年間に数万人という来店客を対象にして、そのすべてのお客様をひとりひとり個別に把握して対応することは不可能ですから、いろいろな属性ごとに区分しながら、より小さなグループに分けて、そのグループごとに管理していくという手法をとることになります。 こうしたCRMの考え方の基礎になっているのは、「新規顧客を開拓するために必要なコストは、既存の顧客を維持するためにかかる費用の約5倍である」という統計的なデータです。つまり、既存の顧客に、もっと満足していただき、より長く付き合ってもらうために現状の2倍3倍の経費を投入したとしても、新規顧客を開拓するコストに比べればずっと安上がりである、という考え方がベースになっているわけです。 特に、パソコンが手頃な価格になり、誰にでも扱えるような簡単な操作性を持つようになってきた現在、数百〜数千名程度の顧客データを管理することは、その道の専門家ではなくても、店舗レベル、店長さんレベルで充分に可能となってきました。 こうしたCRMの考え方をベースにして筆者のお手伝いしたある郊外のレストランでは、短期間で集めた500名足らずの名簿をもとに、毎月の誕生日のお客様に向けて50通ほどのダイレクトメールを郵送した結果、毎月10組近い反応をいただいたという事例もあります。 先行き不安な時代の中で外食マーケット全体が伸び悩んでいる現在、当たりはずれの多い新商品や新業態の投入ばかりではなく、こうした店舗レベルでの地道な努力が、実は大きな効果を発揮する可能性があるということも良く考えてみる必要があるのではないでしょうか。 |