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このところ、駅ビルやショッピングセンターといった商業施設(※)の飲食ゾーンのリニューアルが盛んになっています。言い替えれば、 それだけ商業施設内の飲食テナントが不振に陥っているケースが多くなっているということなのでしょう。 日本の商業施設は、駅ビルや再開発地域の複合型商業ビルのように、もともと周辺に多くの人々が集まってくる場所に位置しているケースが多いですが、 こうした立地は当然ながら家賃負担も高く、加えて商業施設独自の費用負担も発生しますから、このような商業施設の多くでは、路面店よりも遥かに高い 売上坪効率を実現しないと採算が取れないというのが実状です。 路面店に大衆向けの良質な飲食店が少なかった時代は、そうした高い出店費用を払っても、商業施設内に出店しているというだけで繁盛店となることが 可能だった時代もありました。 しかし、現在は著名な商業施設でも業績が低迷している例も決して少なくはありません。 また、全体としては好業績の商業施設でも、テナントごとの 売上格差(売れている店と売れていない店)は大きくなってきています。 路面店を中心に展開している経営者なら、一度は商業施設への出店を検討したことがあるでしょうが、多大な投資をして出店したものの思うように 売上が上がらず、高い家賃や諸経費と売上低迷のダブルパンチで悲惨な状況を迎えている店舗は決して少なくないのです。 路面店と商業施設内のテナント出店はまったく異なります。路面店では、周辺の居住/勤務人口や店前通行量など、役所で手に入る二次資料や自分で 調査できる周辺の状況などから、商圏内のお客を推測し、営業の可否を判断することがある程度は可能です。 しかし商業施設では、施設自体にどんなにお客がたくさん来館していても、それが、すぐに自店の集客に結びつくとは限りません。なぜなら、 商業施設に来ている大多数のお客の来館目的はすでに決まっており、それは、必ずしもあなたの店に来店することとは限らないからです。 まして、新規オープンの商業施設の場合は、どのような客層がどのような目的で来館するかについて、開業するまで誰も確実なことは言えないという のが正直なところではないかと思います。 また、商業施設では、施設全体が活性化し繁盛するための販売促進には積極的に投資できますが、個別のテナントについて、手取り足取り業績改善の 支援を行うことは(その意志はあっても)事実上不可能に近いと言えます。つまり、テナント自身が自力で業績不振から脱却できそうもない場合、 最終的には、いかに速やかに退店してもらい、次の有力なテナントを誘致するかというのが、デベロパー側の最優先課題となるわけです。 景気後退を受けて、首都圏などの都心部でも家賃価格は下落傾向にあります。2003年問題といわれるオフィスビルの供給過多によって、 こうした傾向には、さらに拍車がかかるかも知れません。 多くの場合、路面店の方が賃料コストが安い分、よりリーズナブルな価格でサービスを提供できるはずですし、初期投資コストが下がれば、 同じ売上でも経営内容はずっと楽になります。 もちろん、商業施設へ出店することのメリットも数多くあるのですが、商業施設への出店を検討するときには、こうした時代の変化を肝に銘じておく 必要があるかも知れません。 註※:駅ビルや再開発商業ビル、地下街、郊外のショッピングセンターなどをひっくるめて「商業施設」と呼んでいます。 |