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日本経済新聞が毎年掲載している「ヒット商品番付」ですが、昨年2002年は外食分野の「讃岐うどん」と「おにぎり」が、ともに東西の前頭三枚目を獲得しました。 また、昨年の大晦日には、夕方から深夜まで、全国のラーメン店を約5時間近くにわたって生中継をまじえて紹介する特別番組が放映され、紅白歌合戦や格闘技などの高視聴率番組の裏であるにもかかわらず、まずまずの視聴率を確保したようです。 こうした状況を見て、この不景気の最中にも外食業界は依然好調であると捉える向きもあるようですが、現実には、外食市場における既存店ベースの売上高は低迷を続け、ごく一部の繁盛店を除いて、前年比を割り込んでいる飲食店が圧倒的多数であるというのが現実です。 「家庭外食生活」の略である「外食」には、実は大きく分けてふたつの分野のマーケットがあります。 ひとつは、「日常食」を提供する場としての外食市場であり、もうひとつは「非日常食=嗜好食」としての外食市場です。 「日常食」としての外食とは、一日三回の食事を摂るべき時間に、仕事や学校などの理由で外出しており、外食する必要があるために飲食店を利用するというニーズであり、このマーケットにおいては当然、外食の機能性やコンビニエンス性が重視され、かつ、あらかじめ決められた予算の範囲内で、どれだけ充実した「食事」ができるかがポイントになります。つまり、価格に比較した時の「商品の品質」が最も重要な要素となるということです。 それに対して、「非日常食」のマーケットとは、例えば「家族揃って美味しいものを食べに行こう」とか「男女のカップルがデートに利用する」などといった、外食という行為それ自体を「レジャーのように楽しむ」ために飲食店を利用するというニーズであり、このマーケットにおいては「商品の質」もさることながら、利用する店舗の中で、どれだけ「満足度の高い時間」を過ごすことができるか、というトータルな価値感が重要になってきます。 外食のマーケットは、このふたつの分野が混然一体となって存在しているのですが、ここ数年、わが国の景気が相変わらず迷走を続けているにもかかわらず、外食分野において比較的客単価の高い飲食店が繁盛する傾向にあったのは、旅行やアウトドアスポーツなどといった、1回あたり数万円〜数十万円の支出と長い時間が必要となる高額なレジャーに比べて、こうした「非日常食」の分野での外食が、圧倒的に簡易で安上がりなレジャーであったためと言えるでしょう。 したがって、客単価2,000円台の居酒屋チェーンの多くが業績低迷を続ける中、客単価3,000円台後半の和食居酒屋に予約が殺到し、行列すらできるといった状況は、決して、わが国の豊かさを象徴する現象ではなく、逆に、財布の中身を気にしながら、少しでも満足できる余暇時間の楽しみ方を探し求める多くの人々が、ポケットマネーをはたいて、月3回の外食機会を2回に減らしてでも、より満足度の高い飲食店に集中した結果であったわけです。 そしてそれは、1個250円以上もする「デパ地下おにぎり」が飛ぶように売れ、800円〜900円といった「こだわり食材のラーメン専門店」に行列ができることとまったく同じ理由による現象でしょうし、むしろ、こうした本来は日常食であった「おにぎり」や「ラーメン」といった分野にまで「こだわりグルメ」志向が広がったということは、わが国の多くの人々が、この先の経済状況にいっそうの不安を抱き、よりささやかな楽しみで満足するようになったということを意味しているに違いありません。 |